3月は移動の季節

3月も下旬、新入生もいれば新入社員もいる。一方ですでに組織に在籍している人間には異動と転職がある。

今日、とある外勤先の病院の最終勤務日だった。と言っても感動的なエピソードがあったわけでもなく、いつもの時間にいつもの通り仕事をしただけ。

10年選手となろうとしている今、外勤先として行ったことのある病院は3つしかない。今日の病院は四年目の時に半年だけ、そして三年前から今日まで週一回勤務をした。特に厳しい病院ではないが休むのだけは気軽にできず、夏休みに年一度だけ休むくらいだった。

荷物整理をしていると、ずっと使っていたサンダルが最後に残った。白いビルケンシュトックのサンダルは、僕が医者になった初年度、つまり9年前に購入したものだ。ややボロボロにはなったがさすがはビルケンシュトック、完全に壊れることはなかった。実は五年前に半年だけその病院に週一回勤務をていたときに持って行ったのだが、その後は持ち帰らずすでに捨てられたものとばかり、というか存在自体をもちろん忘れていた。しかし三年前に再びその病院に行くと約三年の時を経て、同じ場所にそのサンダルはキレイにおかれていた。

おかげで今日まで、僕の医者人生と同じ年月をともにできた。

健康サンダルのような底になっているこのタイプは、最近目にするようになったビルケンシュトックの専門店でもお目にかかれないことも多い。研修医の時、当直で殆ど寝られなかった翌朝、不健康のその身にはそのサンダルの足底は痛くてたまらなかった。そして二度と内科の当直なんてやるものかと何度も誓った。9年前の真冬の早朝のそんな出来事をふと思い出した。

今回、さすがにくたびれたこのサンダルを持ち帰ろうとは思わなかった。むしろここまで使い切ったことに満足しゴミ箱へ置こうと思った。だけれども、今日も同じ場所にサンダルをおいてきた。恐らくそれはまた捨てられずに長い年月を刻むだろう。僕がその病院に再度赴くことは殆どないとおもうが、人生絶対はない。今の自分の境遇だって数年前には想像できなかったわけだから。

万が一、何年後かに再開を果たしたときには改めて聞いてみたいと思う。あの真冬の時より自分は成長できていますか、と。